《技芸の伝承》
古を以て今を開く一代の大師傅抱石
傅抱石(1904—1965)は、中国近代の著名な画家、篆刻家、美術史学者、美術理論家、そして美術教育者です。彼の絵画、書道、金石篆刻における深い造詣と成果は、彼を中国美術史において欠かせない存在とし、近現代の中国美術の発展に大きな影響を与えました。傅抱石は、美術史に対する深い探究心を持ち、その絵画創作においても幅広い影響を受けました。特に、彼は石涛の山水画から大きな影響を受け、また宋元時代の米氏父子や馬夏、王蒙、明清時代の梅清、蕭雲従、龔賢などの作品にも学びました。
傅抱石は、山水画と人物画において顕著な成果を上げ、特に山水画における技法と芸術的境地は、近代中国において独自の地位を築きました。彼は、湿った紙に筆を使って独特の散鋒皴法を取り入れ、柔らかく、神秘的な質感を創出しました。人物画では、古典的なテーマを扱い、特に『湘君』や『山鬼』などは、古代文学への情熱を込めて描かれ、古典の詩詞を単なる再現にとどまらず、自身の感情や体験を反映させて再解釈しています。また、傅抱石は人物の目の描写において特に優れた技量を発揮し、その表現力は特筆に値します。
彼の絵画は、石涛の山水画を受け継ぎ、伝統的な中国水墨画の古風を打破し、古典と自然観察を融合させた自由で奔放な表現を実現しました。傅抱石は、伝統的な山水画に新しい変革をもたらし、水墨画の新しい境地を開拓しました。
大道有傳 – 傅益瑤
傅益瑤(1947—)は、近現代画壇の巨星である傅抱石の娘であり、張大千、郭沫若、林散之、林風眠などの芸術界の重要人物との交流がありました。1979年に日本へ留学し、平山郁夫、塩出英雄に学び、また青山杉雨に指導を受けました。彼女はその画名を世界的に広め、日本の皇室とも親交があり、国際的な展覧会にも参加しました。特に、UNESCOの画展に参加し、NHKの『国宝百選』や『日曜美術館』などの番組にも出演し、大きな反響を呼びました。
傅益瑤は、寺院の障壁画や日本の民間祭り、詩的な絵画、伝統的な山水を主な創作テーマとし、その作品は日本の多くの神社や名刹に収蔵されています。代表作には『仏教東漸図』や『比叡山延暦寺図』、『天台山国清寺図』などがあり、これらは彼女の雄大で気迫のある、また繊細で落ち着いた禅の精神を反映した作品です。
「富胸中之丘壑、嫻古人之筆法。」
この言葉は傅抱石の生涯の名言であり、彼が生涯を通じて後世に伝えた美学思想を象徴しています。傅抱石は傅益瑤に「自強不息」という教えを与え、これが単なる努力を超えた、自己を表現するための美学的な指針となりました。傅益瑤の作品には、父である傅抱石から受け継いだ美学的思想が深く反映されており、彼女の作品には、古典的な筆法と自らの感覚に基づく新たな美学が見事に融合しています。